musical number
Music
by Leonard BERNSTEIN/ lyricksby by Stephan SODHEIM
音楽 レオナルドバーンスタイン/ 作詞 スティーブン・ソンドハイム
Prologue | プロローグ | オーケストラ 演奏 |
最初の「ダンシングおにごっこ」と「指パッチン」でおなじみの、ジェット団とシャーク団との対立の様子を、 アレグロ・モデラートで不安な空気を表した音楽。 プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」から ヒントを得たのでは・・と勝手に思っている。 (佐渡裕もそう言ってたとのが) そういえば、「ピーターと狼」にもちょっと似てる気が。 |
Jet Song | ジェット・ソング | リフ、ジェット団 | ジェット団の団結の強さを歌う。Prologueを元に歌をつけた。 |
Something Coming | 何かがやってくる | トニー | 「何か奇跡のような素晴らしいことが起こる予感がする」というトニーがワクワク感を歌う。 この曲を聞くと、何かいい事あるんじゃない?・・気がしてくる。 |
The Dance At The Gym | 体育館のダンス | オーケストラ 演奏 |
ブルース、パソドブレ、マンボ、チャチャ・ジャンプと、 色々なリズム・テンポの曲が盛りだくさん。 「Maria」と同じメロディラインのチャチャが美しい。 マンボは「キューティーハニー」と「ひょっこりひょうたん島」の 出だしに似ている。 |
Maria | マリア | トニー | 恋の喜びを、マリアの名を連呼しながら歌う、。 まるで、柔らかい灯りが次々に灯されるような甘美で暖かい旋律。 (映画でも、窓の光が印象的に使われている) |
America | アメリカ | アニタ、 シャーク団 |
プエルトリコとアメリカを風刺しながら、スペイン舞曲等の 民族色盛りこんだダンスナンバー。 アメリカ国歌「星条旗」(ソーミドーミーソード〜♪)が モチーフになっている(と、思う) ちなみに、喧嘩会議の時、シュランク警部補に店から追い出された シャークスが吹いている口笛は、皮肉をこめたアメリカの愛国歌、 「Tis of Thee」(イギリス国歌と同じメロディー) |
Tonight | トゥナイト | マリア、トニー | このミュージカルを象徴するトニーとマリアの二重唱。 オペラティックな歌の山場となる。 ベンジャミン・ブリテンのオペラ「ルクリーシャの陵辱」の「おやすみ」 を、引用したと言われている。 もともとOne Hand,One Heartがこのシーンで使われる予定だったが 賛美歌のようで神聖すぎる、との理由でQuintet から抽出されて 作られた。つまりQuintetの方が元だった。 |
Gee,Officer Krupke | クラプキ巡査 | ジェット団 | 社会風刺がきいたコミカルナンバー。 (ラスト部分のズッコケフレーズ、 「チャッチャカチャチャッチャ・うん・チャ・チャ」は バーンスタイン作曲という事だろうか?) |
I Feel Pretty | すてきな気持ち | マリアとコンスエロ、ロザリア、フランチェスカ | マリアのウキウキ感をフラメンコのリズム等も交えて、 プリティ〜に歌う楽しい曲。 |
One Hand,One Heart | ひとつの手、ひとつの心 | マリア、トニー | トニーとマリアのアダージョ。 元々、バルコニーのシーンでマリアとトニーの愛が深まるシーンとして 使われる予定だった。 |
Tonight (Quintet) | クインテット (トゥナイト 五重唱) |
マリア、トニー、アニタ、ジェット団シャーク団 | ジェット団・シャーク団・トニー・マリア・アニタ、 それぞれの「Tonight」の思いが掛け合いになる五重唱。 バーンスタインのオペラティック手法で ミュージカルナンバとしては画期的。 |
The Rumble | ランブル | オーケストラ 演奏 |
決闘のダンス場面。 プロローグと同じメロディ・ライン(!) メロディ・リズムの一つ一つに合わせた振り付けは見事。 |
Cool | クール | アイス、 ジェット団 |
決闘を前にに「クール」になれ、とアイスが(舞台ではリフが) 言い聞かせる歌。 モダン・ジャズのコンボ的な感覚で書かれたバーンスタインの 音楽センスが光る。 ゲゲゲの奇太郎の曲はここからヒントを得たと勝手に思っている。ピンクパンサーも似てるけど・・ |
A Boy Like That and I Have a Love | あんな男に/私は愛している | アニタ・マリア | アニタがトニーは人殺しだと歌い、それに対して マリアがトニーへの愛の強さを歌う。 オペラティックな手法で書かれ 音楽的最大の山場となる。(山場が多い!) この曲の中で流れるメロディが、ワーグナーの 「ニーベルンクの指環〜愛の復活のテーマ」の パクリであることは有名らしい。 |
Somewhere | サムホェア | マリアとトニー | どこかにきっと二人だけの新しい世界がある、、幸せな 平和な世界のビジョンを夢見る。 ベートーヴェンの「皇帝」の第二楽章のメロディを一節で使っている。 個人的にはワグナーの“トリスタンとイゾルデ”のイゾルデの死 が浮かぶ。同時期に作られたキャンディードの中の make our garden glow は、この曲の続編のような気がする。 |
映画版の編曲はソール・チャプリンが担当。
オーケストラ楽団を限定せず、各分野65名の演奏者を集めて演奏。
他にもマンボバンドが「The Dance At The Gym」「America」等を担当。
また、ジャズのシェリー・マン(ドラム、レッド・ミッチェル(バス)ピートコンドリ(トランペット)などの
ジャズの名手が「Prologue」「The dance at the gym」「Cool」の背景音楽を演奏。
音楽部分はトータルで52分30秒。指揮はジョニー・グリーン。
宮川彬良氏による WSS音楽解説
バーンスタインは意識的にか、音一つ一つに意味を込めている。
骨だけで全てを語るムダのない音楽である」
オーケストラでなく、たとえピアノ1本だけで弾いたとしてもメロディーで世界が変わる。
全体の基本となるドとファ♯の音は音楽理論上もっともハモらない、親戚でない、敵対した音。
つまりシャークとジェットとの関係を表す。
プロローグ、口笛の出だし部分(ソドーファ♯)はソとドという響きあう「家族」のような音に仲の悪いファ♯が加わる。
そして“あなたが敵のファ♯じゃなくってソだったら良かったのに・・”と、ドファ♯ソ〜のMariaのメロディーが生まれる。
又、COOLではドファ♯・ソファ♯ド と、心が揺れ動く。
ラスト、Somewhereの1節、とても希望的なレミーという響きに低いファ♯が響く。
希望の中にも対立は常にある、という事を表現している。
※追記・・よ〜く聞いてみると、最後にファ♯からソに、さりげなく半音移行している。平和の兆し?
( 「J-WAVE、Classy cafe('05) 」「NHKわくわくラジオ〜アキラさんの音楽ドレミ塾('06)」より)
●バーンスタインの音楽の魅力、
“何かをする時にはそれに対する愛情ゆえに必ず全身全霊を込めて取り組む”
主義の彼自ら、WSSは「自分の子供」「神が宿った」と語る作品。
♪♪♪♪♪♪
♪「ゆうべの初演は私が夢に描いたとおりになった。芝居の筋も曲もまるではじめて見聞き
するような気分で泣いたり笑ったりした。」
(バーンスタイン談 1957年8月19日、ワシントンの初演を見て)
♪「ラジオから流れるポピュラーソングやシナゴーグ(ユダヤの教会)で
昔ながらに奏でられる音楽を聞いて育ったバーンスタインの曲には、常に
最も通俗的な音楽と神聖な音楽の、両極端である両方の音楽の影響が見られる」
( デイリー・テレグラフ紙 1994年〜 バーンスタインの伝記より)
♪どこかで誰かが僕の曲を口笛で吹いているのが聞こえる・・・1度でいいからそんな体験をしてみたい」
と、まだ作曲家としてのヒットがなかったバーンスタインは語ったそうだ・・・口笛どころじゃないでっせ。
ダンスだけ見ていても音楽が聞こえ、音楽だけ聞いてても踊っている姿が浮かぶ・・
まさに「卵が先かニワトリが先か」・・登場人物1人1人が音符のようで、動きは音楽記号、
メロディーがストーリー。カラフルな音色、複雑な不協和音、美しく転がるようなハーモニー、そんな音達が
ある日ある時のウエストサイドでの出来事を物語っている。
様々な作曲家、ジャンルの音楽の魅力を熟知した上で作られた曲は、まるで「音楽の万博」・・
WSSナンバーだけで、あんな作曲家やこんなジャンルの音楽・・と色々なエッセンスが味わえる。
ミュージカルナンバー、映画音楽、という狭いジャンルでは納められない。
作曲家・吉松隆も言っていたが 20世紀最高のクラッシック作品 ・・・私もそう思う。 (By 店主)
●映画版吹き替え
Maria | 〜 | Marni Nixon |
Tony | 〜 | JimBryant |
Riff (Jet Song) | 〜 | Tucker Smith |
Anita ( A Boy Like That) | 〜 | Betty Wand |
ナタリー・ウッドは全曲歌うつもりで、全曲録音していたが製作サイドからNGがでて吹き替えに決定。
(※ドキュメンタリーDVDでナタリー生歌を聞ける。Quintetは“ジャイアン指数”やや高め)
機嫌を損ねないように・・と、その事は撮影終了まで秘密に。後、吹き替えと知って
不機嫌になったものの、自分とよく似た声質のマーニ・ニクソンの歌声を気に入り了解。
最後、フィナーレ部分のSomewhereだけは生声らしい。
ラス・タンブリンはJet Song 部分だけアイス役のタッカー・スミスが歌っているが、
(※これもドキュメンタリーで聞ける) 本人は、「そんなに難しくなかったので使って欲しかった」と不満気。
リタ・モレノもA Boy Like Thatの高音部分がでなくてベティ・ワンドに吹き替えになったものの、
「彼女の歌は感情をうまく表現できてないわ」と、やはり不満気。
唯一、リチャード・ベイマーだけが「僕の歌をちょっとでも聞いたら、あれが吹き替えだった
という事がすぐにわかるよ、わっはは!」と納得している・・・。
ちなみにジム・ブライアントはトニーとは似てもにつかない感じらしい。
(コレクターズエディションDVDドキュメンタリーの確かな情報+ネットで見た不確実な情報参照)
●映画と舞台とシンフォニック・ダンス
ミュージカル自体は1957年(バーンスタイン39歳)の作。
舞台の初日はブロードウェイで同年9月に上映。これを映画にしたのが1961年。
「シンフォニック・ダンス」も映画と同じ1961年の作で
同年2月13日、自らニューヨークフィルハーモニーの特別演奏会で初演を振った。
ダンスナンバーを中心に必ずしも劇の進行を追うものではなく、シド・ラミンと
アーウィン・コスタルにオーケストレーションをゆだねてコンサート用の
管弦楽組曲として効果的に構成されたもの。
〈シンフォニックダンスの曲順〉
1 | Prologue |
2 | Somewhere adagio |
3 | Scherzo vivace leggiero |
4 | Mambo |
5 | Cha-Cha (Maria) andantino con grazia |
6 | Meeting Scene |
7 | Cool fugue allegro |
8 | Rumble molto allegretto |
9 | .Final adagio |
♪コンサートに行くと、8番目の“Rumble”の山場でいったん演奏が止まるため
そこが終了だと思って拍手が起こる事が度々。まだ先がありますよ〜!